讀物 | 夏目漱石:心(6)

讀物 | 夏目漱石:心(6)

來自專欄日語學習筆記4 人贊了文章

今日のおすすめーー<心>

- 先生回憶起雙親過世後,叔叔對他態度的轉變。先生領悟到,社會上並沒有天生的壞人,很多好人會在關鍵時刻突然變成壞人,不可不提防,也因此更難以提防。

しかしそんな事は問題ではありません。ただこういう風(ふう)に物を解きほどいてみたり、またぐるぐる廻(まわ)して眺(なが)めたりする癖(くせ)は、もうその時分から、私にはちゃんと備わっていたのです。

それはあなたにも始めからお斷わりしておかなければならないと思いますが、その実例としては當面の問題に大した関係のないこんな記述が、かえって役に立ちはしないかと考えます。あなたの方でもまあそのつもりで読んでください。この性分(しょうぶん)が倫理的に個人の行為やら動作の上に及んで、私は後來(こうらい)ますます他(ひと)の徳義心を疑うようになったのだろうと思うのです。それが私の煩悶(はんもん)や苦悩に向って、積極的に大きな力を添えているのは慥(たし)かですから覚えていて下さい。

不過問題不在這裡。只是那時候,我就已經有了這個毛病,動不動就把事物大卸八塊,翻來覆去,細細琢磨。這一點一開始我就應該跟你交代一下,在敘述里加入這種跟眼下的問題毫無關係的實例,反而會有些用處。你就這樣看下去好了。因為我想,這種個性可能會影響一個人的所作所為,使得我日後越發懷疑起了他人的道義之心。毫無疑問,正是我的個性促使我走向了煩悶、苦惱的深淵。請你務必記住這一點。

話が本筋(ほんすじ)をはずれると、分り悪(にく)くなりますからまたあとへ引き返しましょう。これでも私はこの長い手紙を書くのに、私と同じ地位に置かれた他(ほか)の人と比べたら、あるいは多少落ち付いていやしないかと思っているのです。世の中が眠ると聞こえだすあの電車の響(ひびき)ももう途絶(とだ)えました。雨戸の外にはいつの間にか憐(あわ)れな蟲の聲が、露の秋をまた忍びやかに思い出させるような調子で微(かす)かに鳴いています。何も知らない妻(さい)は次の室(へや)で無邪気にすやすや寢入(ねい)っています。私が筆を執(と)ると、一字一劃(かく)ができあがりつつペンの先で鳴っています。私はむしろ落ち付いた気分で紙に向っているのです。不馴(ふな)れのためにペンが橫へ外(そ)れるかも知れませんが、頭が悩亂(のうらん)して筆がしどろに走るのではないように思います。

話一走題,難免讓人不明白,還是言歸正傳吧。我自認為,能夠寫這封長信,說明比起處境與我相同的人來,我多少還是比較淡然處之的。夜深人靜後,電車的聲響已停歇,不知何時,木板套窗外傳來幽幽蟲鳴,使人不覺想起眼下正值銀露霜秋,一無所知的妻子在隔壁睡得香甜。我拿著毛筆,一筆一畫地刷刷地寫著,此時此刻,我的心情毋寧說是平靜如水的,雖說筆尖會由於不常寫字而滑出線外,但絕非頭腦混亂,信筆胡寫。

私はこの公認された事実を勝手に布衍(ふえん)しているかも知れないが、始終接觸して親しくなり過ぎた男女(なんにょ)の間には、戀に必要な刺戟(しげき)の起る清新な感じが失われてしまうように考えています。香(こう)をかぎ得(う)るのは、香を焚(た)き出した瞬間に限るごとく、酒を味わうのは、酒を飲み始めた剎那(せつな)にあるごとく、戀の衝動にもこういう際(きわ)どい一點が、時間の上に存在しているとしか思われないのです。一度平気でそこを通り抜けたら、馴(な)れれば馴れるほど、親しみが増すだけで、戀の神経はだんだん麻痺(まひ)して來るだけです。私はどう考え直しても、この従妹(いとこ)を妻にする気にはなれませんでした。

也許我是借用這一公認的事實來敷衍吧。我總覺得朝夕相處的男女之間,會失去相愛所需的刺激引發的清新感覺。正如在焚香的一瞬間才聞得到香味一樣,品酒只有在剛入口的一剎那才最有味道。以此類推,愛情的衝動也只存在於頃刻之間,一旦沒有感覺地度過那個瞬間,那麼越熟悉就只會越親密,只會使愛情的神經漸漸麻痹下來。我思來想去,無論如何也不想娶這位堂妹做妻子。

遺憾(いかん)ながら私は今その談判の顛末(てんまつ)を詳しくここに書く事のできないほど先を急いでいます。実をいうと、私はこれより以上に、もっと大事なものを控えているのです。私のペンは早くからそこへ辿(たど)りつきたがっているのを、漸(やっ)との事で抑えつけているくらいです。あなたに會って靜かに話す機會を永久に失った私は、筆を執(と)る術(すべ)に慣れないばかりでなく、貴(たっと)い時間を惜(おし)むという意味からして、書きたい事も省かなければなりません。

很遺憾,我現在急於往下交代,以至於無法把那次談判的詳細始末寫在這裡。說實在的,還有比這重要的事情等著我去寫,我的筆尖躍躍欲試,想儘快奔向那裡,我好容易才控制住它。永遠失去了對你從容講述的機會的我,不僅不習慣寫字,而且從珍惜時間的意義上說,也必須略去一些想說的內容。

あなたはまだ覚えているでしょう、私がいつかあなたに、造り付けの悪人が世の中にいるものではないといった事を。多くの善人がいざという場合に突然悪人になるのだから油斷してはいけないといった事を。あの時あなたは私に昂奮(こうふん)していると注意してくれました。そうしてどんな場合に、善人が悪人に変化するのかと尋ねました。私がただ一口(ひとくち)金と答えた時、あなたは不満な顔をしました。私はあなたの不満な顔をよく記憶しています。私は今あなたの前に打ち明けるが、私はあの時この叔父の事を考えていたのです。普通のものが金を見て急に悪人になる例として、世の中に信用するに足るものが存在し得ない例として、憎悪(ぞうお)と共に私はこの叔父を考えていたのです。私の答えは、思想界の奧へ突き進んで行こうとするあなたに取って物足りなかったかも知れません、陳腐(ちんぷ)だったかも知れません。けれども私にはあれが生きた答えでした。現に私は昂奮していたではありませんか。私は冷(ひや)やかな頭で新しい事を口にするよりも、熱した舌で平凡な説を述べる方が生きていると信じています。血の力で體(たい)が動くからです。言葉が空気に波動を伝えるばかりでなく、もっと強い物にもっと強く働き掛ける事ができるからです。

你還記得吧,我曾跟你說過,社會上並沒有天生的壞人,很多好人會在關鍵時刻突然變成壞人,因此不可不提防。當時,你還說我情緒有點激動。後來,你又問我,好人在什麼情況下會變成壞人。當時,我只回答了一個『錢』字。那時候,你顯得不太高興,我現在還記得你當時的樣子。現在,我可以告訴你了,那時我想到的就是這位叔叔。我是懷著憎惡,把他作為正常人一見到錢就變成惡人的例子,作為世人皆不可信賴的例子聯想起來的。我的回答對於要深入探索思想領域的你來說,也許是不能令你滿足的,是陳腐不堪的,但是,從我的角度來說,卻是活生生的回答。那時,我的確特別激動,我相信,用灼熱的舌頭敘述平凡的道理,要比用冷靜的頭腦分析新鮮事物更為生動。因為,人的身體全憑血液推動;因為,語言不僅能使空氣產生波動,還能夠更強烈地作用於更強之物。


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