(論文)「コ」「ソ」「ア」の伝統的分類方法の問題點  ――コミュニケーション機能からの再考

(近來很多同學來諮詢論文如何選題,希望大家能夠從感興趣科目或者知識點找到靈感。)

要旨本論では、とくにその「コ」「ソ」「ア」の伝統的分類方法の問題點について、「コ」「ソ」「ア」それぞれのコミュニケーション機能の分析を通じて考察した。その結果、コミュニケーション機能においては、?コ?系は話し手中心、?ソ?系は聞き手中心、?ア?系は両方中心であることがわかった。また、言語の主體性という概念を導入してこうした問題點を踏まえた上で、「コ」「ソ」「ア」の新たな定義と再分類を試みた。

キーワードコミュニケーション機能;主體性;再分類

有關「コ」「ソ」「ア」傳統分類方法的問題

——從其交際功能出發再思考

摘要:本文針對傳統分類方法的問題,通過對「コ」「ソ」「ア」本身的交際功能的分析,進行考察。結論是:在交際功能方面,「コ」系列是以說話者為中心的;「ソ」系列是以聽話者為中心的;「ア」系列是以兩者為中心的。另外,引入語言的主體性這一概念,立足於這些問題,試圖對「コ」「ソ」「ア」進行新的定義和再次分類。

關鍵詞:交際功能,主體性,重新分類

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「コ」「ソ」「ア」の伝統的分類方法の問題點

――コミュニケーション機能からの再考

レジュメ

1.はじめに 

2.伝統的分類方法の問題點

2.1「縄張り」

2.2「対立型」と「融合型」

3.「コ」「ソ」「ア」のコミュニケーション機能

3.1「コ」系の受容性

3.2「ソ」系の排外性

3.3「ア」系の曖昧性

4.目立つ「ソ」系と目立たない「ソ」系

 4.1「ソ」系の仲間外れ

 4.2「ソ」系の付き纏い

5.言語の主體性から「コ」「ソ」「ア」に対する再分類

6.終わりに

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有關「コ」「ソ」「ア」傳統分類方法的問題

——從其交際功能出發再思考

1.引言 

2.傳統分類方法的問題

2.1勢力範圍

2.2「對立型」和「融合型」

3.「コ」「ソ」「ア」的交際功能

3.1「コ」系列的接納性

3.2「ソ」系列的排外性

3.3「ア」系列的曖昧性

4.顯眼的「ソ」系列和不顯眼的「ソ」系列

 4.1「ソ」系列的離散

 4.2「ソ」系列的附屬

5.從語言的主體性出發,對「コ」「ソ」「ア」重新分類

6.結論

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「コ」「ソ」「ア」の伝統的分類方法の問題點

――コミュニケーション機能からの再考

要旨本論では、とくにその「コ」「ソ」「ア」の伝統的分類方法の問題點について、「コ」「ソ」「ア」それぞれのコミュニケーション機能の分析を通じて考察した。その結果、コミュニケーション機能においては、?コ?系は話し手中心、?ソ?系は聞き手中心、?ア?系は両方中心であることがわかった。また、言語の主體性という概念を導入してこうした問題點を踏まえた上で、「コ」「ソ」「ア」の新たな定義と再分類を試みた。

キーワードコミュニケーション機能;主體性;再分類

1. はじめに 「コ」「ソ」「ア」の伝統的分類方法

日本語にはコソアドと呼ばれる指示詞の體系が存在する。その中の「ド」系は疑問などの機能を果たしており、ほかの「コ」系、「ソ」系と「ア」系との違いがはっきりしているため、本文では「コ」「ソ」「ア」の3系統に限って、考察を進めて行くことにする。コソアドは、目に見えるものを指し示す現場指示の用法と、話に既に出てきたものを指し示す文脈指示の用法に分けて考えることが一般的である。しかし、「コ」「ソ」「ア」の機能に関しては、言語學者たちは「三分法」と「二分法」とに分けている。「三分法」とは「縄張り」との視點から「コ」系が話し手の領域に所屬する範囲を指示する機能、「ソ」系が聞き手の領域に所屬する範囲を指示する機能、「ア」系が話し手の領域にも聞き手の領域にも屬さない範囲を指示する機能、という分類方法である。「二分法」とは、話し手と聞き手が対立する場合の?対立型?と話し手と聞き手が融合する場合の?融合型?という分類方法である。

2.伝統的分類方法の問題點

2.1「縄張り」

日本語の指示形態素「コ」「ソ」「ア」は、さまざまな単語を組織的に形成する。そして、「コ」を含む語が話し手に近い領域、事物、方向などを、「ソ」を含む語が聞き手に近い領域、事物、方向などを、さらに「ア」を含む語が話し手からも聞き手からも遠い領域、事物、方向などを

指示する。

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以上は「コ」「ソ」「ア」に関して広く知られているところであるが、これらの分析において、

佐久間(1951)、腹部(1968)、神尾(1979)、安藤(1986)などが、話し手および聞き手の縄張りまたはそれと同義の概念による分析を行っている。つまり、「コ」は話し手の縄張りを、「ソ」は聞き手の縄張りを、「ア」は話し手、聞き手両者の縄張りの外に屬する領域をそれぞれ表わすものとされる。

しかし、「ちょっと、そこまで」という例文の中「そこ」は、縄張りの理論によれば聞き手に屬する領域であるが、実は、聞き手は話題の場所が全くわからないのではないだろうか。これが、縄張り理論の問題點である。

2.2「対立型」と「融合型」

「コ」「ソ」「ア」の使用上の區別は、現場指示の具體狀況や話者側の主観や意志などによって決められている。現場指示の用法において、三上(1970)は対立型と融合型があると指摘している。話し手と聞き手が離れている場合は、話し手の近くにあるものはコ、聞き手の近くにあるものはソ、どちらからも離れているものはアで指す。一方、話し手と聞き手が同じところにいる(あるいは話し手だけの)場合は、近くのものはコ、遠くのものはア、どちらでもないものはソで指す。

ところが、すでに挙げた例文の「ちょっと、そこまで」の「そこ」は、定義によると、対立型のソ系で既定されたように聞き手に屬するところではないことがわかる。しかし、聞き手が知らないところであるとはいえ、融合型の定義のように話し手と聞き手が一體となるとは言えないと考えられる。なぜなら、話し手がそう答えた時一體になる気持ちが感じられないどころか、尋ねられる気も教える気もないからである。むしろ、聞き手を排外する気持ちが込められているのではないだろうか。つまり、もともと、融合型とソ系の性格が矛盾していると考えられる。その上、対立型と融合型という分類方法は、現場指示の範囲に限っている。文脈指示機能などは、この分類方法に該當するかどうかはわからない。これらは、?対立型?と?融合型?という分類方法の問題點である。

ところで、學校文法では、コソアドの體系を近?中?遠?不定という4つの體系と教えることが多い。しかし、ソ系の言葉をそのように説明することには問題がある。ソ系はむしろ「我」と「汝」とがすでに知っているものを指すと考えたほうがよい。また、李長波(『日本語指示

體系の歴史』)は「コ」「ソ」「ア」という三つの系列の指示詞と人稱體系との関わりについて

歴史的な観點から考察した。ソ系の特殊性と文脈指示機能の抽象性などもあり、皆に納得される結論を下すことは、非常に難しいといえる。

3.「コ」「ソ」「ア」のコミュニケーション機能

「大辭林」によると、コミュニケーションとは社會生活を営む人間が互いに意思や感情、思考を伝達し合うことである。それは言語?文字?身振りなどを媒介として行われる。コミュニケーションと言うと、まず最初に社交の場面を思い出すかもしれないが、広義にいえば、獨り言を除くすべての文章、談話、講演などを含めるのである。もちろん、指示詞の基本的な機能(現

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場指示)も含まれている。つまり、1、指示される物との関係で、話し手と聞き手が一つの所にいるとみなせば、近くの物や所は「コ」系、少し離れた物や所は「ソ」系、遠くの物や所は「ア」系の指示詞を使う。2、話し手と聞き手を分けてとらえれば、話し手の領域を「コ」系、聞き手の領域を「ソ」系、どちらの領域でもない場合は「ア」系で指す。これは、すでに定説になっているので、ここでは例を挙げて説明することは省く。

3.1「コ」系の受容性

佐久間(1900)によって「コソアド」と名付けられた指示詞の體系によれば、「身近なものや己に屬するものは「コレ」「コノ」「ココ」「コチラ」「コンナ」「コウ」のようにすべて「コ」の體系で指示することが可能」である。

 次にコミュニケーションの場面における、「コ」系の具體的な機能を分析しよう。

(1)話し手自身がよく知っている、しかも強い関心を持つひと、こと、ものを指示する場合。

1A:煙草の火が落ちて、あなたのズボンが燃えてますよ。

B:こりゃ大変。(『外語學習與研究』)

Bが「コ」系を使ったのは、燃えているズボンがBに屬するもの、しかもBが強い関心を持つものだから。

(2)話し手がこれから話すことを指し示す時は「コ」系の語を使う。

2これは、まだ內緒にしてほしいんだけど、會社を辭めようと思ってるんだ。(『外語學習與研究』)

  話し手が後で話そうとすることは、話し手しか知らないその領域に帰屬することだから、「コ」系を使って指す。

(3)話し手がすぐ前に話したことを指し示す時は「コ」系の語を使う。

3來年の春、結婚するの。でも、これは、まだ秘密にしてね。(『外語學習與研究』)

  話し手がすぐ前に話したことは、もちろん話し手に屬することだから、「コ」系で指し示す。

(4)話し手が、自分で話題にした物事を自分に引きつけて指し示す場合、「コ」系で指すことができる。

4私の後輩に佐藤という男がいます。この男は…(『外語學習與研究』)

  自分で話題にしたことを引き続き説明する時、話し手には自分を中心に話題を進めようとする意志があるといえる。これにより話の連続性と一體性が感じられる。

(5)「コ?系のもう一つの重要な用法は、後に述べる事柄を指し示す用法である。

5彼女はこう言いました。?少し考えさせてください?。(『外語學習與研究』)

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(6)6のように「そりゃ」も使えるが、ただし、意味上多少の違いが感じられる。それは

聞き手中心で、客観的に話した場合である。それに対して、「こりゃ」が使えるのは、

話し手の主観的な思いを伝える場合だろう。久野(1900)が指摘したとおり、「コ」系

が用いられた時は、聞き手の前に、生き生きとした情景がみられるようである。「ソ」

系が用いられた時、話し手と聞き手がお互いに対立している狀態を表している。

6A:昨日鈴木先生が間違って子供さんの靴を學校に持ってきちゃったのよ。

B:こりゃ面白い。(『外語學習與研究』)

(7)いわゆる観念指示の場合は「コ」系も使える。

7こんなはずじゃなかったのに。これじゃ、もう全て終わりだ。(『外語學習與研究』)

  このように指示內容が話し手の頭の中にあり、聞き手にはその內容がはっきりしない場合、話し手が自分に屬することだと思っているから、「コ」系を使ったのである。

(8)他人のことであっても、話し手が自分のもののように話題に出そうと思っている場合は

「コ」系が使える。

8自分の頭で考え、自分の腕で食い、自分の意思で行動する。この有能な妻は自由が欲しくなって、會社を辭めた亭主を「あなた、家をお出になって」と追い出す。(『外語學習與研究』)

ここでは、話し手は自分が話題に取り上げた事柄に焦點をあてて話そうとしているから、「コ」系を使ったのである。

(9)法律の文。

9日本國民たる條件は、法律でこれを定める。(『外語學習與研究』)

  強調とか読者の注意を引き込む目的で、「コ」系を使ったのである。

(10)談話中、聞き手を引き込む部分は「コ」系で指し示すことができる。

10清水さんのおかげで、ようやくいえに帰りつくことができました。私はこの時初めて、人の親切のありがたさをしみじみ感じたのです。(『外語學習與研究』)

  この場合、9の法律文の中に「コ」系を使った理由とよく似ている。

(11)感動詞の使い方(詠嘆)。

11aこれは大変だ! 

   bこれは立派な時計ですね。(『日本語概説』)

ここでは、「これは」が連語として話し手が意外な物事に出會って驚いたり、感動したりする気持ちを込めている。

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(12)以下二つの文の中の「コ」系は自分の領分で起きたことについて、プラスかマイナスか、

強い感情表現を表わしている。

12 aこら! 誰だ? ガラスを割ったのは?

この馬鹿者!(『ウチとソトの言語文化學』)

ここの「こら」は人をしかったり、とがめたりするため、相手に強く呼びかける時に発する聲である。aの文を読むと、読者は部屋の主人が家のガラスが割れた狀態を見て非常に怒っている場面が想像できるかもしれない。ガラスが割れたのは、他人の部屋ではなく、話し手自分に屬するものだから、「こら」を使ったのである。

3.2「ソ」系の排外性

「汝」の側に屬するものは「ソレ」「ソノ」「ソコ」「ソチラ」「ソンナ」「ソウ」のようにすべて「ソ」の體系で指示することが可能である。

次はコミュニケーションの場面における、「ソ」系の具體的な機能を分析したものである。

(1)相手がすぐ前に話したことを指し示す時、「ソ」系の語を使う。

13A:君は昨日酔払って皆に家まで送ってもらったそうだね。今日はその罰として君におごらせるんだって皆言ってるよ。

B:そんなこと言ってるんですか。これは參ったな。(『外語學習與研究』)

  ここでは、Bが言った「そんなこと」は「皆言っている」こと、つまり「今日はその罰として君におごらせる」のことだろう。Bにとっては、Aのすぐ前に話した「皆言っている」ことは自分の領域に屬さないことであるから、「ソ」系で指し示す。

(2)話し手が話題にした物事を、聞き手が取り上げて指し示す場合、?相手の領域の物?とみなして?ソ?系を使う。

14A:娘の友達に花子ちゃんという子がいてね。この子はなかなかお行儀がよくて…

B:あら、その(×この)子なら、私も知ってるわ。(『外語學習與研究』)

Aが「この」を使ったのは、A自身が話の対象をよく知っているが、聞き手が知ら

ないと思っているからである。したがって、Bが自分の領域に屬さない対象(すでにAが自分に屬する対象だと認定した)を指示する場合、「その」を使ったのである。

(3)他人に関することを指し示す時、「ソ」系の語を使う。

15A:昨日は山田さんのうちへ行っていろいろな話をしましたよ。

B:それはよかったですね。(『外語學習與研究』)

Bが使った「それ」は昨日山田さんのしたことで自分がしたことでも自分に関することでもないから、「ソ」系で指し示す。

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(4)他人の意見、自分の意見ではないことを表わす時にも「ソ」系を使って指す。

16A:あなたも病気だといって休めばいいでしょう。

B:私はそういうことはやりたくありません。(『外語學習與研究』)

Bが「ソ」系で指し示したのは、Aの述べた考えが自分の意志でないことを客観的かつはっきり表そうとしたからである。

(5)仮説及び確実でない內容の中の要素を指す場合に用いられる。

17A:ゆうべも地震がありましたね。

B:そうでしたね。そういえば近頃は地震が続きましたね。小さいけど。(『外語學習與研究』)

ここの「ね」は終助詞として相手の同意?返答などを期待する意を表す。つまり、Bがゆうべ地震があったことを確信していないから、「ソ」系を使う。

(6)話し手自身がよく知らない対象を指す場合に使われる。

18A:私は、會社の先輩と結婚することになったんです。

B:おめでとう。で、その人、どんな人?(『外語學習與研究』)

  BがAの話した「會社の先輩」を知らないから(もちろん関係のないひとだから)、「ソ」系で指し示す。

(7)話に出た物事が聞き手の理解の中に位置づけられ、話し手と聞き手から同じように少し離れた物事になったと(話し手が)みなせば、?ソ?が使われる。

19車の衝突事故を見たんだ。それを見て安全運転しなきゃって思ったよ。(『外語學習與研究』)

 聞き手あるいは読者は「それ」の指示することがすぐ前の「車の衝突事故」であることがわかる。もし、「これ」を使ったら、時間的にすぐ前あるいは距離的に目の前に起こったように感じる。より詳しい説明が必要だと思う。

(8)話し手は、相手の話を引き継いで、自分のものとして話せば?コ?系が使えるが、相手のこととみなせば「ソ」系も使える。

20A:私は「後悔先に立たず」ではなくて、「後悔後を絶たず」ですよ。

B: なるほど、「後悔後を絶たず」ですか。これはいい言葉ですね。(『外語學習與研究』)

       ここでは、「これ」とすると自分の中で定著して自分のものにした気がするが、「そ

れ」とするとまだ相手の言葉である。

(9)談話中、話し手が聞き手と共有していないことを指し示す時、「ソ」系を使う。

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21私は先週、一週間休みをとってつりに行っていたのです。この魚はその時私が釣ったものの內一番大きいやつだよ。(『外語學習與研究』)

(10)指示対象はふつう談話に現れるが、そうではないものもある。いわゆる観念指示の場合

は、「ソ」系も使える。

22教師を目指す人は、それまでに勉強以外にもいろいろな経験をしておいたほうがいい。(『日本語文法整理読本と演習』)

この文には「それ」の指示対象が現れていないが、文脈から「それまでに」は「教師になるになるまでに」を指していることがわかる。

(11)「ソ」系は、以下の文のように聞き手志向が強く表現される。しかし、「コ」のように粗

野な間投詞になることはない。

23そら、やっぱり、だめだろう?(『ウチとソトの言語文化學』)

  ここでは、「そら」が注意を促す時などに発する語である。この文を読んで、「やっぱり、だめ」なのは聞き手のこと、あるいは聞き手のしたことだということがわかる。つまり、聞き手中心のことを表わす時、「ソ」系を使うのである。

(12)感動詞の使い方(詠嘆)。

24アラスカはそれは寒いところでした。(『日本語文法整理読本と演習』)

ここは「それは」連語としてその物事に対する感動などが、形容のしようもないほどであった時に用いる語。なんとも言えない意味を含めている。

3.3「ア」系の曖昧性

話し手にも聞き手にも屬さないものは「アレ」「アノ」「アソコ」「アチラ」「アンナ」「アア」のようにすべて「ア」の體系で指示することが可能である。現場指示の「ア」系では周知のとおり、話し手と聞き手どちらの領域でもない場合は「ア」系で指すことになっている。「ア」系の指示詞は、融合型として両者共通の場にあるとの意識から発せられる。そのため指示対象が會話の現場に存在しない場合には、共通認識の観念として話される。文脈指示で「ア」系を使う場合は、お互いが前から知っている物事に関してである。つまり、現場指示でお互いから遠くに見える物を指すような気持ちである。

次に具體的なコミュニケーションの例の中から、「ア」系の具體的な機能を分析する。

(1)話し手も聞き手も指示対象を知っているということが両者に確認されると、それ以後、話し手は「コ」が使えなくなる。

25A:娘の友達に花子ちゃんという子がいてね。この子はなかなかお行儀がよくて…

B:あら、その子なら、私も知ってるわ。あの子は今どき珍しいくらいお行儀がいい

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のよね。

   A:ええ、あの(×この)子、この前も遊びにきたんだけど…(『日本語文法整理読本と演習』)

  AがBも花子ちゃんと言う子を知っていることが確認できた後、再び話の対象をもちあげた時、すでに両者とも知っている人だから、「この」ではなく、「あの」を使ったのである。

(2)話し手も聞き手も指示対象を知っている場合、つまり頭の中にあるイメージを指す時に用いられる。

26A:昨日、銀座で山木にばったり會ったよ。

B:そうか。あいつ、元気だったか?(『日本語文法整理読本と演習』)

(3)27のように、明らかに共通體験がないのに「ア」系が使える例がある。しかし、これは、私の考えでは、相手を引き込むために、相手も同じ體験をしているかのように言うためのストラテジーではないかと思う。

27大學を出るとすぐアメリカに行ったんだけどね。あの時は大変だったよ。(『ウチとソトの言語文化學』)

(4)相手が知らない物事についても「ア」を使えることがある。これは、話し手が回想の気

持ちなどを強く持って指し示す場合である。

28おまえの生まれる前、私たちは橫浜に住んでいた。あの頃は生活が苦しかった。(『日本語文法整理読本と演習』)

4.目立つ「ソ」系と目立たない「ソ」系

コソアド詞を使った熟語には、「あちらこちら」「あれこれ(迷う)」「そうこう(するうちに)」「そんなこんな(で忙しい)」などがある。不思議なことにその組み合わせが「コ」「ソ」「ア」のうちで「アーコ」、「ソーコ」のみである。「ソ-ア」だけが見つからない。ソ系の特殊性が関係していると思われる。目立つ「ソ」系と目立たない「ソ」系とは一見すると、矛盾しているかもしれないが、実は「ソ」系の二つの方面の性格である。

4.1「ソ」系の仲間外れ

「ソ」系の指示機能の多様性、指示範囲の曖昧性などの特徴から、ときどき本來の性格を失って、「コ」「ソ」「ア」體系から離れて獨自の性格を持つことがある。その中の一部が接続詞になっている。たとえば、「そして」、 「それで」 、「そんなら」などである。

構成上、一部の「ソ」系が助詞と結び、接続詞になる。読者が間違うこともよくあるそうである。

8

29貧乏でできなければ為せぬが宜しいが、それを乞食のように人に泣き付いて,修業

をさせてもらうとはさてもさても意気地の無い奴ともだ。(『浮雲』)

30昨日までは大変暑かった。それが急に涼しくなった。(『外語學習與研究』)

31辭書を買いたいのですが、それも少し大きいのがほしい。(『外語學習與研究』)

また連語としてよく使われている言葉がある。たとえば、

32それはそれは、美しい人でした。(それはそれは=非常に)(『大辭泉』)

33コーヒーか、それとも紅茶か。(それとも=もしくは)(『大辭泉』)

34そんなに夜遅くまで勉強したのか。(そんなに=それほどに)(『大辭林』)

35妙なうわさがそれとなく耳に入る。(それとなく=遠まわしに)(『大辭泉』)

36話し合えばそれなりの成果はある。(それなり=それ相応に)(『大辭泉』)

37晴れたし、それに風もない。(それに=その上)(『大辭泉』)

38勉強をそっちのけにして遊ぶ。(そっちのけ=考慮に入れない)(『大辭泉』)

39食事もそこそこにでかける。(そこそこ=取り急いで)(『大辭泉』)

40努力はしている。それなのに報われない。(それなのに=そうであるのに)(『大辭泉』)

ほかに、それだからといって、それにもかかわらずなどが文の中で獨立しても成り立つ。

4.2「ソ」系の付き纏い

 「ソ」系本來の指示性格が失って、「ド」系と一緒になってはじめて意味をもつ場合もある。

41だれそれとかいう人も來ていた。(だれそれ=だれか)(『大辭泉』)

42どこそこのだれだれ、と名のってください。(どこそこ=ある場所)(『大辭泉』)

では、なぜ「ド」系が「ソ」系(「コ」系でも「ア」系でもない)と結んだのか考えてみよう。「ソ」系の特殊性もさることながら、「ソ」系本來の性格(3.2、話し手自身がよく知らない対象を指す場合に使われる)に関係があるのではないだろうか。すなわち、知らないのだから、「ド」系の疑問機能に粘著していると思う。

5.言語の主體性から「コ」「ソ」「ア」に対する再分類  

「コ」「ソ」「ア」のコミュニケーション機能とは、簡単に結論を下すと、「コ」系は話し手自身及びその親近者にかかわるすべての情報を指し示す時に用いられる。もし、以上の條件にお

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いて、「話し手」を「聞き手」に置き換えれば、聞き手の情報になったから、一般的に「ソ」系が使われる。また、「ア」系で指し示す場合は、話し手も聞き手も共同認識、共同體験を持

つ情報を指し示す時、及び同じ體験をしているかのように言う時である。

さて次の會話文を見てほしい。

43A:あの店、今日買い物に行ってきたよ。

B:ああ、あの店、品物も多いし安いし本當にいいでしょう。

A:帰りに壽司屋にも寄ったんだけど、その(この)壽司がすごくおいしかったよ。

B:へえ、どこ?その壽司屋。私も行きたいわ。

C:あ、それって、駅にすぐ橫にある壽司屋のことじゃない?

A:うん、そうだよ。

C:ああ、あそこは僕も行ったことがあるけど、本當にうまいね。(『日本語文法整理読本と演    習』)

ここでポイントになることは會話に參加している人の間で、事柄について共通認識、共通體験があるかないかということである。共同認識がある場合には「ア」系が、ない場合には「ソ」系が使われるのが原則である。ところで上の例でAはいきなり「ア」系で切り出した。これはその店が遠いと言う意味ではなく、この話題に出された店についてはAとBの間ですでに共通認識になっていて、あの店と言うだけで通じるはずという前提があるからである。Bももちろん知っているから「ア」系で受けたわけである。Aは次に壽司屋について話し、その(この)壽司と言ったが、それはこれまでその壽司屋について話したことがなかったので、「ソ」系(強調の場合はコ型)で新情報が発信されたのである。Bはその壽司屋を知らなかったので、當然「ソ」系で受けた。ところが面白いことにCは始め「ソ」系で受けたのに、後で「ア」系に変えた。それは壽司屋を巡ってAとCの間で共同認識が?ない?または未確認の狀態から確認された?ある?の狀態に変わったことを意味する。ようするに、コソアドは會話の中では知識、経験の共有の有無を元に文脈によって異なった使われ方をする。

言語はコミュニケーションの手段である。時枝誠記は「人間の表現行為そのものであり、また理解行為そのものである」と述べ、主體性という観點から獨自の言語學、國語學を創始した。よって、指示詞を研究する時どうしても「主體性」という概念を取り入れる必要がある。これに関して、44の文を見てみよう。

44大學を出るとすぐアメリカに行ったんだけどね、(あの/その)時は大変だったよ。(『ウチとソトの言語文化學』)

ここでは、「あの」の方が「その」よりも聞き手に強い印象を與える。つまり、「あの」が使われると「あの時」は文の中のストレスになるが、「その」が使われると客観的かつ冷靜的な

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説明になる。したがって、「その」が使えると文の中心が述語の「大変だった」になる。このように、話し手が相手にどんな情報を與えようかという発話動機によって、指示詞の使い方も変わるのかもしれない。これがいわゆる「主體性」である。

要するに、「コ」「ソ」「ア」のコミュニケーション機能を踏まえた言語の主體性からの再分

類は以下のようになる。

「コ」系が使われる場合、話し手は距離的も心理的も自分に屬する物、事、所及び主観的に自分の事柄のように思い込んで受け入れて指し示す時である。「ソ」系が使われる場合は、話し手は聞き手(あるいは読者)と対立していると思って聞き手に屬する物、事、所とみなす時及び未知の事柄または仮説のことをまるで別の世界のように指し示す時である。「ア」系が使われる場合は、話し手は聞き手(あるいは読者)と共同體験を持っている事柄及び同じ體験をしているかのように指し示す時である。

6.終わりに

本文では「コ」「ソ」「ア」の伝統的分類方法の問題點から「コ」「ソ」「ア」それぞれ獨自のコミュニケーション機能を基準として言語の主體性の観點も導入したうえで再分類してみた。ひとことでいうと?コ?系は話し手中心、?ソ?系は聞き手中心、?ア?系は両方中心及び言語を使う人が指示詞を選択する時の動機(だれに焦點化されているのか)によって用いられる。私たちが指示詞を使用する時、また理解する時にこうした點に著目すれば応用も可能なはずである。本文では?ソ?系の特殊性についての分析は十分ではなかったが、今後の研究の課題にしたいと思う。

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參考文獻

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