【N0】【天聲人語】20180309引っ越しの春

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江戸の絵師(えし)、葛飾北斎(かつしかほくさい)は大変な転居(てんきょ)癖があったらしい。數えの90歳で亡くなるまでに、93回すまいを変えたとされる。1日のうちに3回引っ越しをしたこともあるというから、相當の猛者(もさ)である

江戶時代的畫家葛飾北齊似乎有很嚴重的搬家癖,據說他在虛歲90歲去世之前搬了93次家。甚至曾經一天之內搬過三次家,可謂是搬家達人了。

▼絵に熱中(ねっちゅう)するあまりだろう、部屋は散(ち)らかり放題で、どうにもならなくなると家を変えた。新しい環境に身を置くことも好きだったようで、生涯(しょうがい)で100回の転居(てんきょ)を目指すと語っていた。住み替えが、晩年(ばんねん)まで変化を続けた畫風(がふう)の活力になったのだろうか

可能是太沉迷於作畫,房間極其雜亂無章,實在忍受不了便搬家。似乎是喜歡置身於新的環境,他曾放言要在有生之年搬家一百次。搬家也許是他直至晚年畫風都不斷變化的活力來源吧。

▼入學、就職、転勤……。春は引っ越しの季節である。住む場所を変えると、新しい自分になる気がする。そんな経験をお持ちの方もおられよう。だからこそ荷物(にもつ)を出すときには、今までの自分を置いていくような寂しさもある

入學,就業,轉行......春天是喬遷的季節。變換住所,感覺可以迎來新的自己,應該也有人有這樣的經驗吧。正因如此,在整理行囊之時,也頗有放下過去的自己的寂寥之感。

▼〈この部屋を出てゆく/ぼくの時間の物指しのある部屋を〉。詩(しじん)人の関根弘(せきねひろし)さんが、慣れ親しんだ場所を去る気持ちをつづっている。使わなくなった炬燵(こたつ)や火鉢(ひばち)を殘していくが〈ぼくがかなしいのはむろん/そのためじゃない/大型(おおがた)トラックを頼んでも/運べない思い出を/いっぱい殘してゆくからだ〉

詩人關根弘在詩中寫到:「走出這個房間,這間有著我所有青春年華的房間。」表達了詩人在離開自己熟悉地方時的依戀之情。留下不再使用的被爐和火盆,寫到:「我自會悲傷,但絕不因為如此,卡車帶走了行李,卻帶不走滿滿的回憶。」

▼この春いつもと違うのはドライバーの不足だという。希望日に転居できない「引っ越し困難(こんなん)者」が生まれそうだと昨日の経済面にあった。いつにもまして落ち著かないシーズンになりそうだ

據說與以往不同的是今年春天卡車司機人手不足,昨天經濟版面也提及現在出現了不能如期搬家的「搬家困難者」。這個季節似乎成為了比以往還不能使人平靜的季節。

▼詩人は置いていった思い出を〈かならず/とりにくるよ〉と書いた。新天地での忙しさが一段(いちだん)落したら戻ってくるといい。たとえ心の中だけの旅であったとしても。

詩人把暫時封存的回憶描述為「一定會回來重溫」,在新地方的忙碌告一段落之後再回來也未嘗不可,即使只是心中之旅也可以。

【單詞整理】

△転居:(三類)遷居,改換住處(住居を変えること。)

△猛者:(名)猛將,能手(荒々しい人。また、技術、體力を持つ強い人。)

△放題:(名,形動)表示自由,隨便,毫無限制等意(ある動作を意志のままに行うこと。)

【背景資料】

1.葛飾北斎

 葛飾 北斎(かつしか ほくさい、葛飾 北齋、寶暦10年9月23日〈1760年10月31日〉? - 嘉永2年4月18日〈1849年5月10日〉)は、江戸時代後期の浮世絵師。化政文化を代表する一人。代表作に『富嶽三十六景』や『北斎漫畫』があり、世界的にも著名な畫家である。

 北斎は、93回に上るとされる転居の多さもまた有名である。一日に3回引っ越したこともあるという。75歳の時には既に56回に達していたらしい。當時の人名録『広益諸家人名録』の付録では天保7?13年版ともに「居所不定」と記されており、これは住所を欠いた一名を除くと473名中北斎ただ一人である。北斎が転居を繰り返したのは、彼自身と、離縁して父のもとに出戻った娘のお栄(葛飾応為)とが、絵を描くことのみに集中し、部屋が荒れたり汚れたりするたびに引っ越していたからである。また、北斎は生涯百回引っ越すことを目標とした百庵という人物]に倣い、自分も百回引っ越してから死にたいと言ったという説もある。ただし、北斎の93回は極端にしても江戸の庶民は頻繁に引越したらしく、鏑木清方は『紫陽花舎隨筆』において、自分の母を例に出し自分も30回以上引越したと、東京人の引越し好きを回想している。なお、明治の浮世絵師豊原國周は、北斎に対抗して生涯117回引越しをした。

 最終的に、93回目の引っ越しで以前暮らしていた借家に入居した際、部屋が引き払ったときとなんら変わらず散らかったままであったため、これを境に転居生活はやめにしたとのことである。

2.関根弘

 関根 弘(せきね-ひろし)は、昭和時代の詩人。 大正9年1月31日生まれ。業界紙記者などをへて詩作に専念する。第二次大戦後「列島」「現代詩」のリーダーとして活動。アバンギャルドとリアリズムの統一をめざし、昭和29年野間宏と「狼論爭」を展開した。平成6年8月3日死去。74歳。東京出身。詩集に「絵の宿題」「死んだ鼠」、評論集に「狼がきた」など。

3.関根 弘  <この部屋を出てゆく>

この部屋を出てゆく

ぼくの時間の物差しのある部屋を

書物を運びだした

機を運びだした

衣物を運びだした

その他ガラクタもろもろを運びだした

ついでに戀も運びだした

時代おくれになった

炬燵(こたつ)や

瀬戸火鉢

を殘してゆく

だがぼくがかなしいのはむろん

そのためじゃない

大型トラックを頼んでも

運べない思い出を

いっぱい殘してゆくからだ

がらん洞になった部屋に

思い出をぜんぶ置いてゆく

けれどもぼくはそれをまた

かならず

とりにくるよ

大家さん!

來源:朝日新聞

朗讀:

注音:可樂

單詞整理:可樂

背景資料整理:考薩麥

翻譯:啟琳

校對:任靜

後期:阿瓊

責編:孫鵬軒

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